【私のKeyWord】

  月刊 『税理』 12月号 (VOL.44 NO.15 2001)

  【私のKeyWord】 のコーナーに、掲載して頂きました。

  −− 株式会社 ぎょうせい −−
千里の道も一歩から
 ふと、顔を上げて前を見ると、軽いお散歩気分で歩き出したはずが、目的地など、遙か彼方で、見えてもいない。「どうしよう」と途方にくれる。社会に出てから20年余りの私の足跡を振り返ると、こんな光景がたびたび登場する。
 薬学部を卒業し、プログラミングの魅力に取り憑かれてソフトハウスに転職し、簿記に出会って感動して、税理士試験。じっくり、先見性のある洞察力をもって進む道を選んでみえる方々からは、とても愚かしく見えるかもしれない。
 税理士試験に合格できたので、とんでもない勘違いをしているかもしれないような夢を描きながら開業してしまった私は、今また、ふと顔を上げて、そこに千里だか万里だかも知れない道があることに、ちょうど気がついたところ。
 下手の横好き程度の知識と経験のみで、ソフトハウスに転職し、初めてプロのソースリストを見たときは、一瞬、後悔しそうになった。外人さんから話しかけられたみたいだった。後悔するのは癪なので、端から1つ1つ読んで調べて理解して。1年もするとなんとかプロの仲間入りをしていた。
 税理士試験も、合格することの困難さを知らずに手を出した。2・3年のことだろうと。2・3年たってみて、やっと気がついた。またまた、千里の道。これも引き返すのが癪なので、人からの情報に耳を傾けるようにし、成功した人の方法は真似をしてみて、「いつも1歩でいいから」と自分に言い聞かせながら、やっとのことで、たどり着いた。
 だから、いつの間にか「千里の道も一歩から」という言葉が、エールのような、お守りのような存在になっていた。どんな偉大なものも、1歩の積み重ね。どんな困難も、1歩を重ねることで、解決にたどり着く。
 これから、最低限、普通に税理士としての仕事をそつなくこなすことができるようになるまで、そして、多少の夢を追うことができるようになったら、きっと声をかけ続けていくと思う。「1歩でいいから、進もうね。」と。自分にも、隣にいる人にも、通りがかりの途方にくれている人に向かっても。
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